「悠斗は無傷なの?」

「当たり前だろ。こんな雑魚相手に怪我するわけない」



腕に湿布を貼ってくれながら話す悠斗はいつもと少し雰囲気が違っていて、違う人と話しているみたいだった。



「なんか口調変わってるけど」

「あー…久しぶりにスイッチ入れたから中々切れないんだろうなあ」



手当が終わって救急箱に使ったものを片付けている悠斗が、興味なさそうに答えてくれる。



「あれ、みんなは?」



周りを見渡しながら聞く悠斗につられて私も周りを見渡すけど、3人の姿はなかった。



「あぁ、下の奴らの手当しに行ったんじゃないかな?」

「そっか」



いつのまにか2人きりになっていた事を知り、いつもみたいにふわっとした雰囲気じゃない悠斗を見ると少しだけ鼓動が早くなった気がした。



「早くいつも通りに戻ってよ」

「そんな意識して変われるもんじゃねぇっつーの」



呆れたようにフッと笑ってくれた顔が格好良くて、思わず顔を逸らせば悠斗の後ろで中瀬が鉄のパイプを振りかざしているのが見えた。



「悠斗っ!!」



とっさに庇おうと体を動かせば、逆に庇われるように悠斗に頭を抱きしめられる。



「いってぇな…」



悠斗の反応は驚くほど早くて、頭を狙っていたはずの鉄のパイプは腕で受け止めていた。

その腕も私を守るために出したものだとわかる。