「瑠榎ー、遅刻するぞー」
「わかってるー!」
次の日の朝。
また一緒に住むことができるようになったお兄ちゃんの声に慌てて階段を駆け下りる。
「スカート短くない?」
「みんなこれくらいです!」
リビングからひょっこり顔を出しているお兄ちゃんが怪訝そうな顔をするけど、無視して身支度を整える。
最近、少し心配性になっているお兄ちゃんにはよくスカートの長さとか帰る時間とかを聞かれるようになった。
「今日は何時頃帰って来るんだ?」
2人で朝ごはんを食べていると、心配性を発揮してくれる。
「んー、今日は黒龍のとこ寄ってから帰る」
「黒龍…って」
久しぶりの名前に驚いたような顔をしているお兄ちゃんに笑顔を向けた。
「また、みんなの前に立たせてもらえる事になったんだ」
「そっか…!よかったな!」
「うん」
お兄ちゃんも嬉しそうに笑ってくれて、私はますます笑顔になった。
「あ。でも、帰りは類とか隼人とか誰かに送ってもらえよ?」
「わかったよ」
「誰もいなかったら俺に連絡すること!」
「わかったわかった」
そんなに心配しなくても大丈夫だっての!
なんて、口に出したらまた長いお話が始まるから心の中にしまっておいた。
「あ、やば!もう行くね!」
時計を見ればもう出る時間で、慌ててカバンを持って玄関に向かう。
「瑠榎、弁当!」
「ありがと!いってきまーす」
「いってらっしゃい」
玄関でお兄ちゃんからお弁当を受け取って家を出た。
普通の事なのに、いってらっしゃいと言ってもらえることに嬉しさを感じかながら学校へと足を進めた。