「我が儘ばかり言うから、ちょっと灸を据えてやったら、気を失ったんだ」

「……え?」


この人は、何を言っているの?

でも、そう思った瞬間、前にレオが言っていた言葉を思い出した。



『パパにあんまり深入りしない方がいいよ』

『あの人は律さんが思ってるよりずっと危険だ』

『もうパパとは会わない方がいいよ』


今になって、ようやくその意味の端くれを知った。

私はひどく動揺した。



「……冗談、でしょ?」

「こんなくだらない冗談を言ってどうする。大体、こんなこと、パパの方が冗談だと思いたいさ」

「どういう意味?」


私の声は低くなる。

体中からパパに対する危険信号が出る。



「じゃあ、逆に律に聞くが、どうしてパパの知らないところでレオと繋がっている?」

「……それ、は……」

「ふたりして、裏で、何を企んでいるんだ? まさかパパをゆすろうとでも思っているのか? だからこそこそ会っていたんだろう?」

「そんなことないよ!」

「信じられるわけがない。おまけに、突然『もうこんな関係は終わりにしたい』とレオに言われたんだからな。決定的だ。お前たちの浅はかな考えなどお見通しだよ」


パパは電話口の向こうでクッと笑った。


いわれのないことだ。

でも、パパはそう思い込んでいる。



状況は最悪だった。



『ぼくと律さんが友達になったことは、パパに言っちゃダメだよ』


思い出して、私は小さく舌打ちを吐き捨てた。