靴箱から靴を地面に落として、無意識にため息をついていた

やっと一日が終わった。

作り笑いが張り付いているような気がして、何だか気持ち悪い


「そんなため息ついて、どうした高杉妹」


『うぇ?…あ、神宮寺くん』


委員の頼まれ事を終えて帰る頃にはすっかり人もまばら

だからすっかり気を抜いていた


ふと聞こえた声に顔を上げると、私のクラスの靴箱とは逆側の靴箱の前に人がいた。

話したことはないけど、よく隼人と一緒にいるから顔も名前も知っている。


ーーー神宮寺悠太(じんぐうじゆうた)


なんて、どれだけ私は隼人を見てきたんだろう



「あ、またため息ついた。元気出せよ、高杉妹」


『…その高杉妹っていうのやめてよ』


「だってそうだろ?」


『…そう、だけど私にだってちゃんと名前が、』


「咲絢、だろ?」



ドキン、と心臓が跳ねた


だって同い年の男の子に名前で呼ばれるなんて、隼人以外で初めてだったから

しかもこんなに近くで


名前を呼ばれて顔を上げると神宮寺君は私の目の前に立っていて近くに顔があった。

神宮寺君は隼人に負けず劣らずなイケメンだからさすがにびっくり


驚いてまたうつむいた私に神宮寺君はクスッと笑う



「そうだ、これたかに返しといて。保健室でサボってたらこんな時間になってて返しそびれたから」


『あ…うん』



ぽんと手渡せられたのは、一枚のCD。

なるほど、突然話しかけられたのはこのせい。

受け取ってぼーっと眺めていると、ふと耳元に言葉が舞い降りてきた。

顔を上げると神宮寺君は冷たい笑顔で笑っていた




「好きなヤツと兄妹って、どんな気分?」