不思議書店

『その記憶、頂きます』

そんな声が頭に響き、目を開けると、そこは病院ではなくあの本屋だった。

「おかえりなさい」

「・・・・私・・・」

なぜ自分がここにいるのかわからなかった。

「何でここにいるのかしら・・・?」

香は彼女に微笑んだ。

「ここは『不思議書店』不思議なことが起こる場所」

「そして招かれないものは入れない場所」

「アナタは招かれてここに来た」

「そして全ては終った」

「この先、アナタの一番思い出したくないものは二度と思い出せない。
 そして大切な人のことも」

「なくして初めていとおしい『モノ』もあるんですよ」

祥子は香の言葉の意味がわからず首を傾げるが、

今まで抱えていたものが無くなり、何か軽くなった気がしていた。

「最後に一つ伝言です。『ごめん、そしてありがとう』と伝えて欲しいと」

「・・誰に?」

「アナタの中から消えた人から・・・ご来店ありがとうございました」

祥子は店を出た。

なぜか最後に彼女の頬を、分けのわからない涙が一つたどった。