不思議書店

祥子が手にした本は紫の色をした本だった。

表紙には『記憶』との題名。

そして作者には祥子の名前が書かれていた。

他のどの本を見ても題名も何も無いのに、その本だけに書かれていた。

「それがアナタの本」

祥子は本を見つめた。

「コレが・・・私の・・」

「その本はアナタの一番忘れたいことを忘れさせてくれる。
 但し、その代償もまた大きい・・・」

祥子は香の話があまり耳に入らなかった。

自分が今抱えているものをおろすことが出来るなら・・・

その考えが頭をめぐっていた。

「一度忘れたものは二度と取り戻せない・・
 それでもアナタはこの本を使いますか?」

香の瞳が祥子を見据える。

「いいわ!こんな思いをするなら消してしまいたい・・」

祥子にためらいは無かった。

その言葉をきき、香は祥子の本に手をかざした。

「了承のもと、本を開放します」

まばゆい光が祥子を包んでいった。