不思議書店

「おかえりなさい」

その言葉が聞こえて良介は気づいた。

いつの間にか周りの風景は元の『不思議書店』の店内に戻っていた。

「本はアナタにちゃんと語ってくれましたか?」

香は中腰になりながら、良介と目線を合わせる。

その表情は穏やかだった。

その顔をみて安心したのか、良介の頬を涙が一粒流れる。

「ボクは・・・」

「アナタの見た真実は本が語る真実。
 これからアナタが確かめるのは現実の真実。
 真実というのは自分で見て、触れて、初めて知ることができる」

そっと香は良介の頭を撫でた。

「もう既に、アナタの中では決まっているはず。
 どうすればいいのかが・・」

香は良介に鞄を差し出す。

良介は鞄を受け取ると、背負い、ドアへと急ぐ。

そして、ドアの前で立ち止まると一言残した。

「おねえさん、ありがとう」

ニッと笑って『不思議書店』を後にする。

後にはアノ本が残されていた。