君だけを

席替えの時。

僕の手は汗が滲んでいた。

クジをゆっくり引く。

僕は前の方だった。

椎名さんは....やっぱり離れてしまった。

後ろの方に移動していた。


僕はうつ伏せになり目を閉じた。

すごく切ない気持ちになった。


ガタガタッ

またかすかに音がした。

顔を上げると椎名さんがのぞきこんでいた。

「泣いて...るの?ゆいと離れたからですか。」

僕は顔が真っ赤になった。

「へ!?椎名さん!?」

椎名さんは笑った。

「冗談....です」

椎名さんでも冗談を言うんだ。

彼女の意外な一面を知った。

きっと椎名さんは口下手なだけで

人見知りなだけで

普通の子なんだ。

ん?それにしても....

「何でここに....!?」

椎名さんは何事もなかったかのように僕の隣に座った。

「へへ....来ちゃいましたた...席変わってもらった」

「目悪かったの?」


すると椎名さんの口から


「ううん...松岡くんが...松岡くんの....隣がよくて...」

ニッコリ笑った。

僕は完全に自惚れた。