それから父親――相川 陽(アイカワ アキラ)――が迎えに来て、
ばいばい、
と手を振って別れた
「お帰り、ヒロ
疲れたでしょ? 今日はどうだった?」
家に着くと母親――相川 美嘉(アイカワ ミカ)――が出迎えた
「うん、おもしろかった
試合してね、一本とったんだよ」
嬉しそうに語る嘉陽に、
「――ッ! あーもうヒロ可愛いッ!!」
「美嘉、何を今更なことを言ってるんだ!
ヒロが可愛いのは昔からだろう」
「改めて実感したの!」
ぎゅうと、子供のように美嘉は抱き着いた
(おかあさん、ちょっと苦しい……)
そう思いながらも、じっと動かないでいる(正式には『動けない』だが……)
「ヒロ! あそぼ!!」
動けない嘉陽に更に抱き着いてきた弟――相川 美陽(アイカワ ヨシハル)――
嘉陽とは五つ歳が離れているが、その容姿は当時の嘉陽にそっくりだった
「ただいま」
どこにでもある幸せな家庭
嘉陽が十歳の頃だった
