「面――ッ!!」


桜も散り、着々と夏に近づいてきている
蒼く澄み切った空に声が響いた


「一本!」



決して涼しくなく、はっきり言ってむさ苦しい道場


先程、明らか年上のがたいの良い男子から一本取った少女――相川 嘉陽(アイカワ ヒロヤ)――は面を外すと、側で見ていた男の元へと駆け寄った



「先生、勝ったよ」



ほんのりと笑みを浮かべ、男を見上げる


「強くなったなぁ!
今先生と試合したら、先生負けるかもな!」


男――相川 昂(アイカワ ノボル)――は、ニカッと笑い、嘉陽の色素の薄い髪をグシャグシャにしながら頭を撫でた

髪を手櫛で整えながらも、嬉しそうに頬を緩める嘉陽
そんな嘉陽を、昂はその厳つい顔ながら穏やかに見守る



ふと、何かを思い出したように言葉を漏らした




















「ヒロ、千年桜って知ってるか?」