THE CANCEL



小町が帰ってから適当に晩飯を作り始めた

一人の生活にだいぶ慣れたのか、始めは二時間とかかっていたが最近では一時間で出来るようになっていた


(うん、なかなかの上出来)


目の前に広がるのは、美味しそうな料理ばかり……

なわけはなく、はっきり言って未確認物体……

どうやれば作れるのかと、目を疑うようなモノばかり


そう、嘉陽は調理が大の不得意だった

更に言うと調理だけでなく、家事といったものは一切ダメだった



……女子としてどうかと思うが



(見た目は最悪だけど、味は……最悪だけど、お腹の中に入れば皆同じだしね)


そして、それを全て食べ尽くすのも人間としてどうかと思う



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「ごちそうさま」


手を合わせ、食器を流しに持って行く

時計を見るともう八時半をまわっていた


食器や鍋を洗い一段落すると、ゴロンとソファーに横になる


(疲れた……)


何となくテレビを付け、適当に番組をまわす

しかしどれも興味なかったのか、テレビの電源を落としコロコロと寝返りをうつ





再び訪れる静寂



時折、暴走族であろうバイクが走り去っていく音が聞こえる


ふと、出窓の方に目がいった


シンプルな模様の写真立て



一年前に撮った家族の写真



その中の嘉陽は、ほんのりと笑っている