THE CANCEL



おそらく小町は、家族が死んだのは自分のせいだと、嘉陽は自分を責めているのだと思っているのだろう

そして剣道をやめたのは、家族へのせめてもの償い


確かに、小町の考えは正しい

嘉陽はずっと自分を責めてきた


(だけど……)



これはそんなに簡単なものじゃない


「ヒロ……?」


何も喋らないので不安になったのか、恐る恐る呼び掛ける


「チィちゃん……ごめん、行かない」


そう呟き、家の中に戻ろうと踵を返す


扉を閉めかけた時







「ヒロ! 私って、すっごくしつこい性格なわけ
だから、ずっと待ってるから
思う存分皆を待たせてさ、それに飽きたら来なさいよ!
ヒロの我が儘なんて超レアだし?」








にっこり笑って


じゃあ、また明日!

と言って走り去った



(ほんとチィちゃんていい人だぁ!! 感動して涙が……)

       . . . .
その後ろ姿を無表情で見送る


角を曲がり、姿が見えなくなったのを見届けると、静かに扉を閉めた