端から見たら変な光景だろう
腰まである綺麗な黒髪の、大和撫子が代名詞のような少女が暴言を吐き、もう一人は無表情のまま反応を見せないのだから
(チィちゃんて、ほんと面白いなぁ)
目の前で百面相をしている小町を見て、呑気にそんなことを思う
「――で、本題なんだけど」
ボーとしていると、視野一杯に広がる小町の顔
「なに……?」
「今日は稽古に来る?」
その一言に、空気が、時間が止まったような気がした
今まで無表情だった嘉陽の顔が強張る
「もう一年経つよ?
師範もタカ兄もユキ兄もアスカ兄も……皆、みーんな心配してる!
ねぇ、また剣道しようよ」
(ああ、それを言うためにここまで来たんだ……)
これも、小町の気遣いであった
小さい頃から竹刀を握り、神童と呼ばれた嘉陽が、そう簡単に剣道を諦められないと思って
(違うんだよ……チィちゃん、違うの……)
