「ありがと」

全然信じてないけど、と心の中で呟いた。

「トモカ、警戒してんだろ」

当たり前だ。
知り合ってすぐ呼び捨てにしたり、可愛いと言ったりする奴なんてどうせみんなヤリ目的。

「なんで?」

「なんとなく」

「…うん、警戒してるよ」

私が正直に答えると、コースケはあははと笑った。

「あ、その辺でいいよ」

マックの前で車を止めてもらう。

「なんか書く物持ってる?」

「書く物?これしかないけど」

渡したのはペンシルアイライナー。
番号でも聞くつもりかな、教えないけど。
コースケはそれを受け取ると、メモの切れ端に何かを書いて手渡してきた。

「俺の番号。非通知でもいいから気が向いたら掛けてよ」

「うん、送ってくれてありがと」

ドアを閉めて、コースケに手を振る。
クラクションを軽く鳴らしてクラウンが走り去った後、コースケに渡された紙を広げてみた。
カタカナで「コースケ」。
その下にケータイ番号。
多分掛けないだろうとは思いつつ、私はその紙をポケットに入れた。