正午を回り午前の練習を終えた校庭には、後片づけをする後輩がちらほら残っているだけだった。

そんな、さっきまでの活気が嘘のように静まり返ったグラウンドを横切って正門へ向かうオレの背後からは、さっきから延々と

「お前らのせいだ……どうしてくれる……」

という声が聞こえてくる。

どうやら陽人がオレの後を追いかけてきたようだが、
ブツブツブツブツ……オレに呪いの呪文でもかける気だろうか?


「陽人、いーかげんにしろよ!」

「お前が昨日、あんなことするからだ……」

「人のせいにするなよ。ちょっとした冗談だろ」


オレは歩くペースを落として、後ろを歩いている陽人が隣に並ぶのを待った。


「あれは冗談だったのか?」

「当たり前だろ」

「お前って、余裕があるのかないのか分かんねー奴だな」


……余裕?


「……そんなもの、あるわけねーじゃん」


「ねーのかよ!」



陽人が追いつき、ちょうど肩が並んだところで、オレ達は目を見合わせて笑った。



そして、やっと少しだけ調子が戻ってきた陽人は、続けてこう言った。

「いつまでもじらしてねーで、さっさとやっちゃえば?」



「まさかお前にそんなこと言われるとはな」

「見てるとじれったいんだよ。慎のことであんなにイラつくのも、案外それが理由なんじゃないのか?」