「人のせいにするなよ。で、まだチョコと連絡とってないのか?」

「……十時過ぎにメールが届いてたけど……怖くてまだ見てねぇ……」


着替えを終えた陽人は、ロッカーを閉めると、その扉に自分の額をガツンとぶつけた。

おい。かなり鈍い音がしたけど、扉が凹んだんじゃないか?


「あー。『今日のデートは中止!』なんて書かれてたら、どうしたらいいんだ……」

「鬱陶しい奴だな」

見苦しい。
デカい図体をして、何をイジイジしてるんだか。


陽人は着信ランプが点滅し続けている自分の携帯を、黙ってオレの前に突き出してきた。

「ヤマタロ、ちょっと俺の代わりにメール読んでくれ」

「知るか。自分の女の機嫌くらい、自分でとれよ」

「お前、チョコを怒らせたら手がつけられなくなることぐらい、知ってるだろ! はぁー。チョコも深月くらい能天気ならなぁ……」


……まじめに相手をし続けるのがアホらしい。


オレはバッグに制服を丸めて詰め込むと、

「こんなとこで悩んでもどーにもならないだろ。ほら、帰るぞ」

と、隣で固まったままの陽人の肩を叩き、先に部室をあとにした。