「オレさ、チョコと陽人のことは大事な友達だと思ってるんだ」

私は黙って頷いた。

「でも、オレは仲良し四人組にいつまでも拘るつもりはなくて。それより、深月に一人の男として見てもらいたいって言うか……。だから、もしオレが深月とうまくいかなくて、仲良し四人組を続けられなくなったときは、ホントにゴメンな?」


あー、いいなー。なんだろう、この感じ。

決して楽しいだけの話じゃないのに、ヤマタロが深月の名前を呼ぶたびに、その表情はどんどん優しくなっていって、

そんなヤマタロを見ていると、私までほんわかした気持ちになって。

……ヤマタロの恋する気持ちが、私にまで伝染しちゃったのかな?


すると、私たちの話が一通り終わるのを待っていたかのように、校舎の方向から大きなトランペットの音が聴こえてきた。

「今日も始まったなー」

ヤマタロはその音がする方向を、切なそうな……だけど幸せそうな顔で見つめると、もう一度私の方に向き直った。



「女友達と引き換えにとか、そんな馬鹿なことを言うのはもうやめてくれよな」


そして、ヤマタロは真剣な表情で、私に言ったんだ。


「オレの覚悟は、そんな軽いもんじゃねーから」



そうしてヤマタロは、まるでそのトランペットの音色に引き寄せられるように、

「じゃあ、オレ、そろそろ部活行くから。今の話は深月には内緒な」

って去っていった。

最後に、私に背中を向けたまま、大きく手を振りながら。