「へーえ」

そう言うと、彼は私をじっと見た。

ううん。
見たって言うより、睨みつけたって感じで。

「だったら、どうして今日まで黙ってたわけ?」

「え?」

「深月にやましい気持ちがなかったら、隠す必要なかったんじゃね?」

「う……」

それを言われると、返す言葉がない。

「いくら団体旅行だからって、自分の大事な彼女が昔の男と外泊することになって、しかもそれを前日に他のヤツから聞かされて……それで冷静でいろって言う方が、ヒドイと思うんだけど」

あっ!
今、私のこと、“大事な彼女”って言った!!

その言葉に思わず胸がキュンってなるけど、でも今はそんな悠長にときめいてる場合ではなくて。

もともとあまり表情を変えない私の彼だけど、今の顔はいつもに増してクールというか無表情というか。

彼は、もう一度「はぁー」って重いため息をつくと、少し顎を上げ気味に頬杖をついて、横で小さくなっている私のことを上から目線で見下ろした。


「で。なんで黙ってたわけ?」


──やばい。
この人、本気で怒ってるよ……。