──そんなことより、だと?

その言葉に、私の左手の動きがピタリと止まった。


「俺の部屋であんならしくないことしやがって……ヤマタロの奴、内心かなり焦ってるぞ。まぁ、深月の気持ちも分からないでもないけどな。でも、やっぱり黙ってたって言うのはいただけないよなぁ」

そんなことを延々と語る陽人。


私は自分の右手中指の爪をじーっと見つめた。

あーあ……。
マニキュアの量が多かったのか、爪の真ん中にはボテッと液が溜まり、盛り上がってしまっている。

あわててそれを広げようとしたけれど、それは触れば触るほどムラになって、修復不可能な状態に陥って。


「……失敗しちゃったじゃん」

「は?」

「陽人のせいだよ」

「……チョコ?」



不細工な自分の爪を見ていると、無性に腹がたってきた。



あの二人のことになると、放っといたらいつまででも語り続ける陽人にも、

上手にぬれなかったマニキュアにも。



どっちにも、ムカついた。