私は、陽人の話を、マニキュアを塗りながら話半分に聞いていた。


──だって、ね。

ポテチまみれになった深月が「何するのよー!」って陽人にくってかかって、陽人が「自業自得だ、さっさと帰れ!」って怒って。
そして、そうやってギャーギャー騒ぐ二人を、ヤマタロが面倒くさそうになだめすかす……

そんな様子、聞くまでもなく簡単に想像できるって。

陽人って、もはや日常茶飯事と化しているそんな光景を、毎回毎回よくあそこまで熱く語れるよね。

まあ、そんな陽人の熱いところ、嫌いじゃないんだけど。


でも、せっかくなんだし、今夜はやっぱりデートの話がしたいじゃない?


そう思って、陽人の話が二人を部屋から追い出して一段落ついたところで、

「ねえ、明日はどうする?」

って聞いてみた。


携帯を肩と耳で挟み、筆を左手に持ち替えて、今度は右手の爪にマニキュアを塗りながら。

でも、集中しないと、左手は利き手じゃないから上手にぬれなくて。
ダマになりやすいんだよね……。


だけど、陽人から帰ってきた返事はコレだった。

「イヤイヤ、そんなことより。慎って、なんで今更部活復帰したんだ?」


──は?