眠りが、もう一段階深くなる。


一瞬すぅっと意識が遠のいて、周りが真っ暗になって。

いつの間にか、場面は再びさっきのコンビニに戻っていた。


お弁当を選び終わってレジに向かっていたヤマタロが、お菓子コーナーの前で急に足を止める。

気になったものがあったみたいで、ヤマタロは、迷うことなく商品棚にすっと手をのばした。


……え?

ヤマタロが買い物カゴに入れようとしているお菓子って、もしかして……


まさか、まさかのプリングルズー!?


あっ!

ヤマタロが笑った。

今、絶対、おとといの陽人の部屋での出来事を思い出しながら、「フッ」て鼻で笑ったよー!


ヤマタロが、楽しそうに笑いながら、私に背を向けてレジへと向かう。

空いたレジカウンターにカゴを置くと、店員さんがかごの中から商品を取り出して、次々にピッ、ピッとバーコードをスキャンしていった。


ピッ、ピッ……ピッ……


……あ。
レジの途中で、その音が次第に変わっていく。


……タッ、タッ、タッ。


代わりに遠くから聞こえてきたのは、軽やかでリズミカルな音。


この音の正体は、王子様を乗せた馬のひづめ?
それとも、ヤマタロの駆け足?

……近づいてきているのは、どっち?


どこまでが夢でどこまでが現実なのか、よく分からない。

だけど、その音を聞きながら最後に私が見たのは、大好きなヤマタロの笑顔だった。


そうだよ。
ひづめの音でも足音でも、どっちでもいいじゃん。

だって、どっちも、ヤマタロなんだから……。

だから、早く帰ってきてね……。


そこで私のスイッチは完全オフ。

徐々に消えていく照明灯のように、意識はすぅーっと薄れていって。

私はついに、意識を手放してしまった。




……あぁ、よかった。

どうやら私の彼は、機嫌を直してくれたみたいだ──……。


<Fin.>