One Day~君を見つけたその後は~

……いやいや、違うでしょ!

そこであわてて自分で自分にツッコミを入れる。

今の状況とバンジージャンプを一緒にするのはまずいってば!

こんなことを考えてるのがバレたら、絶対ヤマタロに「罰ゲームか!」って怒られるよ……。


ああもう!

神様、お願いだから今すぐ、私に“流されスキル”を与えてくださいー!



「そんなに難しいこと?」

ヤマタロが、余裕たっぷりの顔で私をじりじり追い詰める。


ちょっと待って!

今、飛び込み台で心の準備をしている最中なのに、下から声をかけられたら、また気持ちが乱れちゃうじゃない!


「今日まで散々焦らされたわけだし。ちゃんと言葉にしてくれてもいいと思うけど?」


ほら。
やっぱり、私がどう返事をするか、分かってるんだ。

分かっていて、敢えて言わせようとしてるんだ。


別に、焦らしてたつもりはないんだけど……。


「それが、オレへの“ご褒美”だと思って?」


もーう……。


涙目になりながら、ゆっくりと手を伸ばして、ヤマタロの前髪をかきあげる。


そうだよ。

ここで一言、毎日呼び慣れた名前を呼ぶだけじゃん。

目の前にいる、大好きな人の名前を……。


だけど、口はパクパク動くのに、どうしてもそれが声になってくれない。

これが、本当に、私の精一杯。


お願いだから察して!

これで許してよー!!


だけどヤマタロは

「手、震えてる」

って楽しそうに、自分の手を重ねてきて。

視線は私に向けたまま、私の手にゆっくりと口づけて。


そして一言、

「キコエナーイ」

って……。


ああああもう!

この男、どこまでイジワルなのーっ!!


鬼!

悪魔!


うわぁぁぁぁん!!!