まずい!
これって私の苦手なパターンだ!
何か楽しい話をしなきゃ……。

だけどこの雰囲気では、昨日のメールのことも、“お土産”のことも、全然盛り上がりそうにないし。

どうしよう……。

思いあぐねてうつむいていると、頭上から深いため息が降ってきた。

続けて、

「来るんだったら、先に連絡くれよな……」

っていう低い声も。


……あ。怒ってる。
やっぱり迷惑だったんだ。

もしかして、ヤマタロは一人で勉強するつもりだったのかな。

私がいたら、数学とか質問攻めにしちゃって、勉強が全然はかどらないから。


今日はもう、帰った方がいい、よね……?


そのとき、ヤマタロが、玄関のドアを大きく開けた。

それだけで、びくっとして、肩をすくめてしまう私。

もうとっくに涙目だし、これじゃまるで、怒られてシュンとしてる子供だ。


一歩前に進んで私のすぐ目の前に立ったヤマタロは、

「こんな重い荷物持ってんだから」

そう言いながら、足元に置いてあった大きなカバンの持ち手を軽く握った。

「連絡くれたら、駅まで迎えに行ったのに」

「……えっ?」

意外な言葉に驚いて顔を上げると、ヤマタロは、かなり重いはずの私のカバンを軽々と肩の高さまで持ち上げていて、

「次からは、必ずオレを呼ぶこと」

って……。


そう言ったヤマタロは、ちょっとすました感じの笑顔だった。