「故郷か……」 鮫の頭の中には、冷たく暗い海が描かれているのだろうか。 「鮫は、故郷に帰りたいと思う?」 鮫はどこか遠くを見て、ややあってゆっくりと首を横に振った。 「帰る場所はもう無い」 わたしは陸に上がる前の鮫がどんな風に生きていたかは知らないし、知ろうとも思わない。それはお互いで、鮫はわたしが故郷を捨てた理由を知らない。