人魚姫。海の底の王国に住む、鱗に包まれた下半身を持つ美しい生き物に憧れたのかもしれない。 「何で」 何故かはわたしにもわからない。ただ羨ましくて仕方がなかった、それだけなのだ。 「息がね。苦しいんだ。わたしはちゃんと陸生生物のはずなのにね」 鮫はゆっくりと瞬きをする。深い色の目が閉ざされる。魚に瞼はないから、鮫はどう思っているのだろう。 「苦しいのか」 そう、苦しいんだよ。肺の中は酸素で満たされているはずなのに、体全部余すところなく酸素が行き渡っているはずなのに。