「…………。」




―焼酎………隠し持ってたのか……



誠は大のビール党。本人に自覚はないが、普段ビールばかり飲んでいる誠はそれ以外のものを飲むと、すぐ寝てしまう傾向がある。遥もその事は知っているはずだ。



…………この時焼酎だと思っていたものが日本酒だったと、蒼介は後日誠から聞く事になる。



― 『知り合いから貰った美味しいお酒あるの忘れてたわー』

夏帆と蒼介が出ていった事で、二人に申し訳なく感じる反面…空気が軽くなった誠と綾は安堵の表情を浮かべていた。

そんな二人につけこむように、遥が日本酒を勧めると………
ものの数分で日本酒は空になり、二人は上機嫌で夢の世界へ旅立ってしまった。






………テーブルの上を手際よくセッティングし直していく遥を二人は無言のまま見守るしか無かった。




「あれ……。
木本さん……綾さんは?」



リビングには、ソファの上の誠の姿しか見えない。



「あぁ、綾ちゃんなら隣の客室に寝せたわよ。
さすがに誠と隣り合わせじゃ可哀相でしょ」



用意周到な遥に呆気にとられている間も、三人分のワイングラスと、チーズやらサラミを乗せた大皿が、バランスよくテーブルの上に置かれていく。




「……よし!飲み直すわよ!」



準備万端といった感じで、ソファの脚元にドサっと腰を下ろす遥。



これまでのやりとりで、遥に反抗しても無駄だと察した蒼介は、仕方なく遥の向かいに腰を下ろした。



「……ワイン注ぐからグラス取って」