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「…………」
「…………」
部屋を出る時に見た時計は11時を指していた。
街灯が照らす人通りのない道を無言のまま歩く蒼介と夏帆。
遥の家に行くのが初めての蒼介は土地勘がないため、夏帆の少し後ろをついて行くかたちになってしまう。
合わないはずの二人は何故か同じチョキを出して負けてしまった。
誠や綾が気をつかって、変わるよと提案をしてくれたが、遥が『負けは負けだからダメ』と言い張って、結局、部屋から追い出されてしまった。
遥が何かを企んでいるのは何となく感じ取れるが、どういう理由で自分と夏帆を結びつけようとしているのかが、蒼介には疑問でならなかった。
恐らく夏帆も、遥の強引ともいえる行動に気付いているはず……
悶々と考えながら、無意識に夏帆の背中を見つめていると………
「ホントは…」
「え………?」
「………ホントは、何で笑ったんですか?」
前を向いたまま夏帆は問いかけた。
「………さっきも言ったでしょ、可愛いからだって」
夏帆の声が聞き取りにくく感じた蒼介は、足を速めて夏帆の隣に並んだ。
