猫かぶりな男とクールな女



「そぉ? 」



素知らぬ顔で目の前の空缶を数える遥。




「発泡酒とかねぇの……?」




誠がため息をつきながらキッチンへ向かうと……

俯いていた夏帆が、すかさず声を上げた。



「お酒がないならお開きに…」



「誰が買いに行くかジャンケンするわよー。重いから2人ねー」



夏帆の声を遮るように拳を差し出す遥の目は完全にすわっている。



「き……木本さん」



「じゃーんけーん……ぽん!!」


遥の一方的な掛け声に体が反応してしまい、結局4人とも慌てて手を差し出した。



「あ…………」

「何で………」


蒼介は無表情のまま、その手の先を見つめた。





「ふふ…っ」


再び重い沈黙が走る中…
遥だけは口元を抑えて笑みを隠していた。