「蒼介も……って、どういう事?
夏帆ちゃん、ホントに変な子なの?




今まで背もたれに身を任せていた誠が身をのり出して遥の顔を覗き込む。




「変な子なんて誰も言ってないでしょ…
何でそこに喰い付くのよ?」




目をキラキラさせて顔を近付ける誠に遥は冷たい眼差しを向け、ため息をつくと、再び手帳に目を落とした。




「……まぁ、変わってるって言えばそうかもしれないけど……
蒼介君はさー、夏帆ちゃんを女としてはどう思う?」




「なんでそんな事、俺に聞くんですか?
昨日、初めて会ったのに」




「そうだよ!
ってか、俺にも聞けよ!」



犬のように縋り付く誠を、遥は『ウザい』の一言であしらう。
いつもならめげずにじゃれる誠だが……




「なぁ……夏帆ちゃん、昨日の事なんか言ってた?」




「なんで?」




手帳を見つめたまま言葉を返す遥。




「………いや、なんか…。あんま楽しそうじゃなかったし。
………蒼介の事ばっか見てたし。」





「は………?俺?」




蒼介は唖然とした。見てたというよりは睨まれてたというほうがしっくりくる。




「ふーん……そういう事か……」




ようやく遥が顔を上げる。何故かいやらしい笑みを浮かべて……


「何だよ……?」




ムッとした口調とは裏腹に、誠の耳が微かに赤くなった。




「まぁ………
美人だしね………うん。
でもなぁ…………どうかなぁ…」




横目で誠を見ながら、言葉を濁す遥。


「な、なんだよ?」




「誠には無理かな。」
「お前には無理だよ。」


まだまだ客足の減らない騒がしい店内で、遥と蒼介の声が重なった。