9月も半ばに入ったというのに、まだまだ衰えを感じない暑さの中―

出会いは唐突にやってきた。




『もしもし……?
蒼介?今、大丈夫?』


『こんな時間に大丈夫じゃねぇよ……仕事中だっつぅの』



『あ、わりぃわりぃ。急ぎの用があってさ』



『……ちょっと待ってろ。今、廊下出るから。』




携帯を耳にあてたまま、蒼介は胸ポケットにタバコが入っているか確認し、席を立った。




『んで……何だよ?』


『今日、仕事何時に終わんの?』



蒼介は深いため息をつき、廊下に備えつけられた喫煙室の扉をあけた。
誰もいない喫煙室に一歩足を踏み入れるとタバコの臭いがフワリと身を包んだ。



『………今日は無理。朝方まで企画書練ってたから寝不足なんだよ』


『なんだよ、まだ用件も言ってねぇのに』



『どうせ、また合コンだろ』


『正解。』



電話の向こうで浮かれて話すのは蒼介の大学時代からの友人、日高 誠。
月に2度のペースで合コンを開催しては、その度にこうして蒼介に誘いをかけている。



『行かない』



『……またぁ〜、そんなつれない事言ってぇ。』



『行かない』


喫煙室のヤニだらけの壁に寄り掛からないように椅子に腰掛け、タバコを取り出す。
が、ライターがない事に気付き、小さく舌打ちをした。



『んあ……!お前、今舌打ちしただろ!感じ悪っ……』



『そう思うなら誘うなよ。』



『違うんだってー。今日はお前が来てくれないと、メンツが冴えない連中ばっかりで……』


『どうせいつものメンバーだろ』



『…………』


冴えないメンツというのは、誠同様、大学時代のサークル仲間3人。毎度毎度、同じメンバーがニコニコ顔を揃えて蒼介を出迎える。