翌日。

7時にセットした目覚ましがけたたましく鳴り響いた。

「うーん･･･」

ベッドから腕を伸ばして乱暴に目覚ましを叩いた。

まだまだ寝たりない体を起こしてリビングへ向かった。

リビングには美味しそうな目玉焼きの匂いがたちこめている。

「唯、おはよう」

挨拶したのは美咲ではなかった。

「はよ」

唯は男の目を見ずに返事を返すと食卓のいつもの位置に腰を下した。

男はソファに座って新聞を広げている。

本当はこんな男に挨拶を返したくない。

しかしそんな態度を取れば昨日のような状況になることは避けられない。

男は怒らせなければどこにでもいる普通の父親なのだ。

ただ時々気に障ることがあるとリミッターが外れたかのように暴れだす。

それが分かっているので美咲と唯はなるべく逆鱗に触れないように過ごしている。

「唯、おはよう」

美咲が廊下からリビングへ入って来た。

「おはよう」

美咲には目を見て挨拶を返した。

唯は朝食を食べ始めた。

花柄の茶碗を持ち上げて白米を口に運ぶ。

唯の席からはテレビが見やすい。

いつも男がつけているテレビを何となく見ながら朝食を食べるのが唯の日課だ。