消して消されて

「本気だよ」

瞳の考えていることが分からない。





「それはできない」





唯ははっきりと断言した。

瞳のわがままは出来る限り叶えてきた。

しかし友達といえどこれだけは譲れない。

「瞳は樹のことが好きなの?」

思い切って聞いた。

樹とは確かに数回会っているが、そんなに喋ったことはないはずだ。

連絡先も知らないはず。

まさか一目惚れでもしたのだろうか。

「・・・まあ、普通ならそういうよね」

瞳は樹のことには何も触れなかった。

「唯。今日の夜会える?5分でいいの。時間を頂戴」

「分かった。じゃあ20時に蛍公園でいい?」

蛍公園とは唯と瞳の家の丁度中間の位置に存在する公園である。

「いいよ。じゃあまた後でね」

瞳は唯の別れの挨拶も聞かないまま電話を切った。

唯は溜息をついて携帯をテーブルの上に置いた。