消して消されて

あれから4日が経ち、唯の記憶から瞳の発言が消えかかっていたときだった。

事件は起こった。

自宅で来週の試験勉強をしている時だった。

机に放置していた携帯が音を立てた。

着信音からメールではなく電話だということが分かる。

唯はシャーペンを止めて画面を確認した。

『熊谷瞳』

今は勉強に集中したいので出るのをためらったが、無視するのも良心が咎める。

「はい、もしもし」

唯の中で天使と悪魔が格闘した結果、天使が勝った。

「唯ー!」

テンションの高い瞳の声からテストの結果が予測できた。

「何?」

「数学68点だった!!セーフ」

「良かったね」

電話の後ろがガヤガヤしていて騒がしい。

まだ学校だろうか。

「・・・この間言ったこと覚えてる?」

心なしか瞳の声のトーンが下がった。

「本気なの?」

唯は嘘だと思っていた。

というよりは嘘だと思いたかった。