消して消されて

唯は久しぶりに樹と放課後デートをしていた。

といっても唯の希望で市の図書館で勉強しているだけなのだが。

この図書館は良心的で学生の勉強スペースを作ってくれている。

この時期テスト前なので結構混雑している。

唯と樹は空いている横並びの席に腰を下した。

早速唯は鞄から勉強道具を取り出した。

今日は提出用の問題集を仕上げるつもりだ。

各教科あるので今日中では終わらないだろう。

唯はまず数学を取り出した。

樹は古典だ。

シャーペンを走らせて問題集を解いていく。

「あっ・・・」

ある問題で唯はシャーペンの手を止めた。

すると左横から紙が差し出された。

そこにはあまり上手いとは言えない字で"何か分からないところでもある?"と書かれていた。

唯は樹を見上げると微笑んで首を振った。

これは昨日瞳に教えた問題と同じだった。

それを思い出したのだ。

瞳はテストを乗り越えたのだろうか。

瞳のあの言葉を思い出して唯は樹を再度横目で見つめた。