消して消されて

「ここ、来週のテストに出てくるかもしれない範囲だからな。しっかり勉強しておけよ」

社会担当の若い教師が黒板を指した。

今頃瞳はテスト中だな。

唯はふとそんなことを考えた。

前方に目をやると樹の後頭部が見える。

後ろの席の生徒は樹が邪魔で黒板が見えないのか、左に体を傾けている。

3年生の1学期末テスト。

これが終われば夏休みだ。

「もう3年生だからな。1つ1つのテストを大事にしろ」

前言撤回。

受験生に夏休みなどない。

予備校に行っている生徒は特に忙しくなるだろう。

唯は国公立を志望している。

単純に学費が安いからだ。

しかし国公立一本に絞るのは美咲に止められたので私立も滑り止めで受けておくつもりだ。

できれば特待生になりたい。

そのためにも学力を向上させなければならない。

それなのにここ最近全く集中できていない。

唯は頭を振って自分に喝を入れた。