消して消されて

「んーん。冗談なんかじゃないよ」

笑顔で答える瞳。

真意が全く見えない。

2人の間に沈黙が流れた。

「えっと…」

何か言わなければならないと唯が口を開いたとき、けたたましい着信音が部屋に響いた。

2人の視線が唯の携帯に集まる。

「あ、夏希からだ」

唯は携帯を手に取ると部屋を出た。

このタイミングで掛けてきてくれた夏希に感謝した。

「もしもし?」

「唯?いや…大した用じゃないんだけどさ」

「ううん。掛けてきてくれてありがとう」

唯の異変を感じ取ったのか夏希の声が真剣になった。

「もしかして何かあった?」

「うん…。実はさ」

唯はついさっきの出来事を夏希に話した。

瞳に聞かれないようにトイレへ移動し声を潜めた。

「あの子…」

電話口から溜め息が聞こえる。

「もしかして瞳って樹のことが好きなの…?」

だから前の彼氏とも長続きがしなかったのだろうか。

「んー…。これは私の口からは言えない。でもこれだけは覚えてて」

夏希は一旦言葉を切った。





「私は唯の味方だから」