消して消されて

「どうも」

千里が頭をぺこりと下げた。

「呼び出してごめんね」

「先輩、告白でもしてくれるんですか?」

茶化すように笑う千里に唯も愛想笑いを浮かべた。

「・・・私は告白しないけど、千里に告白してもらおうと思って」

千里は不思議そうな表情に変わった。

「本当のことを話して。理香を脅してるの?」

いきなり核心にせまった。

「どういうことですか?」

千里は戸惑いを隠せない。

「理香があなたに強要されてあなたをいじめてるって話してたけど?」

それまでは意味が分からないという表情を浮かべていたが、急に冷たい表情に変化した。

まるで氷のようである。





「なんだ。絶対話すなってあいつに言ったのに」




180度変わった態度に唯は驚いた。

「でも、あいつが悪いじゃん。元々私のことをいじめなかったらこんなことにはならなかった。私を敵に回した罰よ」

凍てつくような眼。

唯は鳥肌が立った。

「彼女だって反省してるんだからもう許してあげて?」

千里の執念は相当のものである。

どうしたらここまで人を恨めるのか、唯には理解できなかった。

しかし過去のいじめが千里に深い傷を負わせたのは確かである。