消して消されて

5限目以降、どのような授業内容だったかいまいち覚えていない。

唯は愛に昨日のことを問われたが「何もない」と適当に流した。

HRがいつもより短く感じた。

早く千里に本当のことを聞きたいが、真実を知りたくないという気持ちも混ざって複雑だな心情だ。

「唯、どこ行くの?」

愛がHRが終わってすぐに出て行こうとする唯を見て声を掛ける。

「ごめん。ちょっと用事」

「またぁ!?最近唯変だよ」

口を膨らませて拗ねる愛の前で唯は手を合わせた。

「本当にごめん!明日こそ一緒に帰るから」

「約束だよ」

目の前に出てきた愛の小指に唯は自分の小指を絡ませた。

「嘘ついたら針千本飲ーます」

指切った、と愛は勢いよく唯の指を離した。

「じゃぁ、また明日」

「ばいばーい」

唯は愛に手を振って教室を出た。

真っすぐ体育館裏に向かう。

他の場所にしようかと思ったが、人に見つからない場所はここしか思いつかなかった。

昨日千里と理香がいた場所に着いたがシンとしていて物音1つ聞こえない。

周りに民家はないし、テスト1週間前なので全部活活動休止中なのだ。

物音1つしないところで唯は千里を待った。

3分も経たない内にパキっと枝を踏む音が聞こえた。

唯が音が聞こえた方向に目を向ける。