消して消されて

大方話の内容は理解できた。

しかし唯はにわかに信じ難かった。

「クラスの子が先生に告げ口したりしないの?」

「それは千里が止めてる。『絶対に言わないで』って・・・」

いじめられてる本人の口から言わないでほしいと頼まれたら確かに言えない。

「でも、クラスメイトから孤立させるためならショッピングモールで万引きする意味ないじゃない」

唯は疑問を思ったまま口にした。

「あれは、唯さんのことを利用しようとしたの」

唯は理香が自分の名前を知っていることに驚いた。

「どうして私の名前を・・・?」

「実は唯さんは体育祭のリレーのときからうちのクラスでちょっとした有名人なの」

体育祭のリレーの種目の中に学年混合リレーがある。

3-1は2-5と1-4と同じチームだった。

「アンカーが唯さんで、2位から追い上げて1位でゴールしたから」

そういえばそんなこともあった。

「で、どうして私を利用しようとしたの?」

「もうクラスでは私は孤立して千里の目的は達成されたから、今度は他学年とかに範囲を広げて私を学校からフェードアウトさせる気なんだと思う」

つまり唯がいじめを目撃して、それを周囲に広げたらさらに理香の立場が狭まるという千里の狙い。

「昨日、たまたまショッピングモールで唯さんを見かけたらしくて千里から電話が掛かってきたの。で、要領を聞いてその通りに動いたら昨日のような感じに・・・。唯さんが壁から覗いているのも知っていた」

理香は証拠とばかりに着信履歴を見せた。

そこには千里の名前がずらっと並んでいる。