トイレに行く振りをして唯は教室を出た。

携帯ですぐに「田中徹」と検索した。

ヒットしたページを次々と見ていくが、全く見覚えがない。

顔写真が出てきても思い出せなかった。

「本当に記憶が消えてる･･･?」

不思議な感覚だった。

記憶が消えていることは認める。

しかし一方で記憶が消えているのでその人を忘れてしまって悲しいとかいう感情が全く湧かなかった。

まだ半信半疑だが、今までの状況を考えるとあの紙が本物だということを認めざるをえない。

1枚目の紙によって尾崎博の存在が消されて田中徹の記憶が自分から消されたのだ。

唯は残りの髪がテーブルの上にあるのを思い出した。

すぐに携帯で電話を掛けた。





「もしもし、お母さん？今日は絶対私の部屋を掃除しないで!」