げーむ

綾瀬がゆっくりとした手つきで制服のポケットから、ピンクの携帯を取り出す。


『あ、こっちじゃなかった』


しかし、ピンクの携帯をもとあった場所に戻し、別のポケットからさっきのと同じピンクの携帯を取り出した。


綾瀬は携帯の通話ボタンを押し、耳に携帯を押し当てた。


『うん、私。...うん、駄目だったわ。やっぱり、一緒に通学する位じゃ...。いや、待って。...そうじゃないの、違うってば。確かに...そうだけど、まだ契約は継続してるでしょう?...もう1回、チャンスを下さい』


私には綾瀬が誰と話しているのか全く検討がつかなかった。


『うん...。そう、ありがとう』


綾瀬は最後にそう言って電話を切った。


『ふぅ...』


そして、私の前の席に座って、頭を抱えた。


『...』


私の前では、綾瀬はいつも笑っていた。


でも、今の綾瀬には笑顔のかけらもなかった。


何か...重いものを1人で抱え込んでいるような...。


そんな顔をしていた。