げーむ

私には菜月を殺した記憶がない。


覚えているのは、あの声が聞こえた直前までだ。


突然、頭の中に響いたあの声は確かに私の声だった。


『所詮は、美崎百合。あんたなんだよ』


ということは、自分の事を俺と名乗る「私」も、頭の中の声の「私」も。


皆、私自身ということか。


「意味わかんないよ...」


思わず頭を抱えると、脳裏に映像が浮かんだ。


光希の時と同じだ、と思った。


その映像では、私が頭を押さえて何やら唸っている。


そして、生きている菜月が私に声をかける。


『百合くん?どうしたんだ?』


『な、つき...。やば...』


『?』


菜月が足を引きずりながら、私に近づいてくる。


『だ、だめっ!!!今、来たら...ッ!!!』


『だから、何だという...』


菜月が言い終わる前に、私が傘を振り上げる。


そして、振り下ろした。