げーむ

菜月はゆっくりと立ち上がった。


折れた方の足を引きずりながらも、なんとか体勢を整える。


そんな菜月を、私はずっと待っていた。


今の菜月は完全無防備だし、今までの会話で大分気を許しているだろう。


もし、私が本気で勝ちたいのなら。


ここで菜月を殴ればいい。


もし、私が菜月を殴ったなら。


菜月は倒れるだろう。


もし、私が菜月を...。


「...待たせた、な」


菜月が苦しそうに息を吐いた時、私は我に帰った。


...何を考えていたんだ。


菜月を...殺すだなんて。


『でも』


ふいに脳裏に私の声が響いた。


『でも、結局はそうしないと、勝ち残れないんだよ』


「...ちが、う」


『違わないよ。さっき自分で言ったじゃん』


「あれは...ウチじゃないッ!!」


『あれも、これも、あんたも。所詮は...』