「いや、よくわかりました。今日はもう結構ですよ。また、何かわかりましたら、教えてください」

青山はそう言うと立ち上がった。

「あの、少し聞いてもよろしいですか?」

真理子は青山にそう言った。

いいですよ、というと青山はまた腰をおろした。

「佐藤さんはどこで発見されたんですか?」

「S市の海です。崖から飛び降りたんでしょうな」

「そうですか」

「他に聞きたいことは?」

「ええ、倉田さんは何か悪いことをしたんでしょうか?」

「いえ、彼は犯罪行為はしていません。ただ、もし彼一人が生きていれば、彼が殺人を犯した可能性が出てくるというわけですな。なにしろ、佐藤由美の遺書など何も出てきてないわけですから。だから、我々は倉田を探しているのですよ。あなたは倉田が生きていると思いますか?」

少し考えて、わかりません、と真理子は言った。

「実は私はね、倉田が逃避行中に歳が二十も上の佐藤さんに嫌気がさしたんだと思ってるんですよ。そして、捨てられた佐藤さんが自殺した。この説が当っていたとしても、犯罪にはなりませんがね。とにかく、我々は上の命令で、生きていようが死んでいようが倉田を見つけなくてはならんわけです」

そう言うと、青山は部屋から出ていった。

これで、青山刑事の聴取は終わった。