光は物心つく頃には児童福祉の施設に預けられていた。

だから親の顔を知らない。

知らぬまま育ちいつの間にか18歳を迎え施設を出なければならなくなった。

光は施設で育ったことを後悔していない。

みんな家族のように思っていた。

だから迷惑をかけまいと18歳までに自立しようと考えていた。

施設の職員のコネでなんとか就職できたものの、そこの会社が倒産し働き口を
失ってしまった。

19歳のときだった。

あれから1年が経ち今はその日暮らしで生計を立てていた。

食べていくのがやっとでとても家賃を払う余裕がない。

市役所で生活保護を受けようとしたが何かと理由をつけられ申請されなかった。

バイクも友達のツテで譲ってもらった物だ。

「宝くじでも当たらねーかな」

もっとも、宝くじを買う余裕も光にはないのだが。

「腹減った」

光は布団から這うようにして冷蔵庫を開けた。

「げっ。何もない」

すっからかんの冷蔵庫を見て光は項垂れた。

「しゃーない。なんか買いに行くか」

給料日間近のため今は節約時であるが、腹の虫は合唱をやめてくれそうにない。

光は歩いて近くのスーパーまで行くことにした。