それに俺だって、こんなことするつもりは無かった。
ちゃんと自覚はあるんだ…俺は「教師」だって。
でもな…教師だって一人の人間なんだ。
嫉妬だって、欲情だって、それが好きな奴ならするに決まってんだろ。


そう。今回大胆な行動をとってしまったのは、俺の中の「嫉妬」という汚い感情のせい。
昨日のHR、滝本が動いたのは予想外だった。
一ヶ月間、雀の片思いの相手を観察していた俺だが、奴は雀に気のある素ぶりを全く見せなかった。
雀の片思いだと少し安心していた俺が甘かったか。


…あのときの雀の顔は、今も胸の中に焼き付いて消えない。
見たくなかった。
…もう二度と見たくない。
俺以外の男に、あんな可愛い顔晒すとこ。


今、雀は俺の腕の中にいる。
それでも重たくのしかかってくる不安は、どうしたら拭える?
どうしたら俺達二人とも笑顔になれる?
…悲しませたくないのに。辛い思いはさせたくないのに。
お前の幸せを、一番に考えなきゃいけないのに…
この手を離したら、お前はアイツのところに行っちまうんだろ?





「好きだ…」





臆病な俺は、コイツに届かない時にしか思いを伝えられない。
真っ直ぐに伝えられない。本当に卑怯な奴。






「好きだ。」






届かないと分かっているのに、届いて欲しいと思っている自分が、憐れで惨めで情けなくて…。
雀を抱いている腕に、力を込めた。














雀が目覚めたとき、少しでも俺の顔が笑っていますように。











・・・END