嘘カノ生活

 
「俺が高1の頃、祐平、家に婚約者連れてきたんだよ」
 
 
 
徐々に心臓の音が高鳴る。

"婚約者"。

それは沙織さんのことではないだろうか。

そういう考えが頭を巡る。

 
案の定、間宮さんの言葉はそれを指す言葉だった。


その日連れてきたのは沙織さんだと。

彼女は祐平さんと同じ年で、結婚したい相手だと言ってたと。
 
 
 
「祐平も沙織さんも、すごい幸せそうにしてたよ。なんか大恋愛だったみたいでさ」
 


黙って、それを聞く。

だから余計に違和感を感じた。

間宮さんが沙織さんの事を話す時の、雰囲気に。
 
懐かしむように、優しく微笑むその姿に。
 
 
 
「それからは俺と、祐平と沙織さんと3人でよく出掛けた。今考えると俺は相当邪魔者だったんだろうけど」
 
「……」

 
 
間宮さんは苦笑してそう言った。
 

けれどやっぱりどこか違う。

笑っているけど、自嘲するような、そんな笑いだ。


あたしはまだ何も言えなくて頷きつつもそれを聞く。
 
 

「だから、俺も沙織さんを好きになった」

「え…」