嘘カノ生活

それからあたしの涙が止まったのは、数10分後の事だった。

ベッドの脇にあったティッシュで鼻を拭くと、間宮さんは笑って頭を撫でてくれる。



「長くなるけど、大丈夫?」

「はい」



いくら時間が掛かるとしても構わない。

そう伝えると間宮さんはゆっくり、僅かに躊躇いがちに話し始めた。
 
 

「前に俺、兄ちゃん居るって言ったろ」

「あ、はい。でも…」

 

俊介くんに聞いて本当のことは知っていたから、どういう反応をして良いのかわからなかった。

そんなあたしの様子から何かを悟ったのか、間宮さんは微笑する。
  
そして直ぐに真剣な顔つきになって言った。


 
「死んだんだ。…事故で」

「……」
 
 
 
何も言えなかった。

ベッドに横になったまま、天井を仰いでいる間宮さん。

あたしがただ真っ直ぐにその様子を見ていると、ふと目が合う。



「兄ちゃん、祐平って言うんだけどさ。俺とは6歳離れてて」
 
 
 
それは、聞き覚えのある名前。

あの時沙織さんが必死に呼んでいた名前だった。

頭の中で少しずつ繋がっていく。