嘘カノ生活

「意識、いつ戻ったんですか?」

 

立ち上がるのを諦めて、間宮さんに話し掛ける。

その間だって間宮さんはあたしの手を離さない。

 
 
「深夜頃かな。ちょうど麻酔が切れてさ」

「そうなんですか。気づかなかった…」

 
 
この病室の前で寝ていたのに、看護士や医師が通った事さえ気づかなかった。

そう言うと、間宮さんは「お前も疲れてたんじゃね?」と笑う。
 

正直な所、疲れていたというよりはやっと会えたからだ。

ずっと会えなくて、やっと会えて安心したからよく眠れた。 
 
けれどそれを口に出すのも恥ずかしくて、あたしはそれを曖昧に返した。  


それからしばらく言葉を交わす。

それは他愛もない話で、間宮さんはいつものように笑っていた。
  
 

「なあ、朝未」



すると突然、間宮さんはそう言ってじっとあたしを見る。
 
その表情は柔らかいけれど、どこか真剣だった。
 
なんだろうと思うものの、目は逸らせない。 


一方で、手の方に動きを感じた。

さっきまであたしの手を包むように握っていた間宮さんの手が、ゆっくりと開いてあたしの指を絡めとる。
 
手のひらが熱い。

 
 
「はい…?」