嘘カノ生活

その手はやっぱり温かくて大きい。
 
あまり強く握ると起きてしまうかもしれないから、あたしは本当に触れる程度に手を重ねる。

それだけでも十分幸せだった。 
 
 
 
「…本当に良かったです」
 
 
 
間宮さんの顔を眺めながら、再び小さな声で呟く。

 
また、温かい手が握れて。

また、間宮さんを前にして名前を呼ぶ事が出来て。

 
自然に顔がほころんだ。
 
 
しばらく、間宮さんの手を両手で握る。

その長い指に触れたり、大きさ比べをしてみたりした。

指を絡めてみたり、いつもは自分からなんて出来ない事も、間宮さんが寝ているとわかっているからできる。 
 
 
 
段々それに熱中してしまって、ふと時計を見るとだいぶ経っていた。
 
そろそろ俊介くんを起こした方が良いのかな、と椅子から立ち上がるために手を離そうとすると、ぐっと強い力で手を握られる。
 
 

「え…、え?」

 
 
急にそんな風に動かれて驚いているのと、強い力とで立ち上がれない。